恐らくもう5、6年もすれば、コールセンターで働いている人間の4分の1から5分の1くらいは失業してしまい、再就職先が出来ない事態になる未来が見えてくる。
コールセンターを持つ企業の多くは『顧客満足』の為に『一応』コールセンターを持っているわけだが、所詮は世間に対する体裁を取り繕うための偽善施設に過ぎない。本音では多くの企業が自社のコールセンターなんて閉鎖したい、潰してしまいたいと思っている。
不幸にもこれからコールセンターに就職する、あるいはコールセンターしか選択できる就職先が無かった人は、クライアントが自社のコールセンターを潰したいという本音を持っていることは認識いただいた方が良い。コールセンターを廃止する為に大企業の多くは様々な努力をしているのだ。
ではなんでコールセンターを潰したいのか。答えは簡単。金にならないからである。そしてわからない事がある度に電話してくる消費者もはっきり言って切りたい。なぜなら、その消費者の為に人員が必要となり、結果として利益が生まれないからである。
例えばコールセンターの経費削減なんてセミナーを開けば、座席は満席御礼で埋まるという。実際に1個のコールセンターを維持するのには4億やら5億なんていう費用が毎年発生してしまう。コールセンター1個閉鎖するだけで自社の費用は4億~5億も削減できるのである。
最もコールセンターの費用の削減というのは、本質的に見てセミナーなど行う必要が無いように思える。と言うより率直に言って、そんなセミナーでお金が入るなら是非ともセミナーを開きたいほどだ。なぜならコールセンターの費用削減なんて至って簡単。単価と席数を減らせばそれでいい。そのためのコールセンター受注会社への圧力なんて簡単に掛けられる。
一方で、自社のシステム部門ではWEBの明細・申込みシステムを発達させ、顧客へWEBのゴリ押しをすれば良い。コールセンター削減をするための本質はコレだけだから、セミナーなんて要らないほどコールセンター会社を痛めつけるのは簡単なのだ。


恐らくコールセンターをマネジメントする立場の人間は上記の事実をわかっている筈である。
コールセンター業務を受注している管理者は嫌と言うほどクライアント企業から圧力を受けているだろうし、どんなに被雇用者側が辛くて人員を増やして欲しいと思っても、クライアントは絶対にウンとは言わない。
大手通信関連会社の場合はもう4~5年、長く見積もっても7年くらいすれば自社のWEBシステムのごり押しも相当進めているだろうから、コールセンターの席数はかなり減らしていくだろうと考えている。
私が初めてコールセンターに入った時、最初の仕事は通信料の督促部門での仕事だった。ところが入って2週間で、クライアントがお客様サポートセンターと統合することを考えていると聞かされた。意地でも結果を出さねば督促部門には生き残る術は無かったのである。
現役でコールセンター業務をしているオペレーターの方にはにわか申し訳ない稿ではあるのだが、コールセンターという職場には、5年先の明るい未来が全く見えない。コールセンターそのものの需要が0になることは無くとも、今後は確実に減少していく。
コールセンター従業員の待遇は確実に悪化し、現場では毎日のように「待ち呼10です! 待ち呼30です!」とSVはQCの罵声が飛び交う職場がイメージできる。
そんな中で、必死に頑張って働いてきた人が鬱病や不安障害になってしまい、働けなくなってしまう。
かつて御世話になった先輩が最近、ようやくFacebookで「いいね!」やコメントをくれるほどに回復できたようだが、一方で未だ精神科に入院したきり、働けていない女性も居る。将来、コールセンターという職場にはこんな辛い思いをする労働者がたくさん出る。

これからコールセンターで働き始める人は、コールセンターのこれからが上記のような世界になることをイメージしていただいた方が、「こんな筈じゃなかった」と思えて良いかもしれない。


参考記事:日経ビジネスオンライン 派遣切りが生む「顧客切り」
記者:鈴木 裕美、池田 信太朗(敬称略)